「シートベルトしてくれなんて言われたのあなたが初めてだ」なんてよく言われます。
事故を起こして同乗者にけがをさせてしまった場合、声掛けをしていたか否かで責任の重さが違ってきます。ジャパンタクシーという車種の特性を理解すれば防げる事象もありますので理解を深めていきましょう。
道路交通法による定義と罰則
まずはシートベルトに関することが記載されている法律を見てみます。
道路交通法 第七十一条の三
(普通自動車等の運転者の遵守事項)自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定により当該自動車に備えなければならないこととされている座席ベルト(以下「座席ベルト」という。)を装着しないで自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため座席ベルトを装着することが療養上適当でない者が自動車を運転するとき、緊急自動車の運転者が当該緊急自動車を運転するとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
2 自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限る。以下この項において同じ。)に乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、幼児(適切に座席ベルトを装着させるに足りる座高を有するものを除く。以下この条において同じ。)を当該乗車装置に乗車させるとき、疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者を当該乗車装置に乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
3 自動車の運転者は、幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。以下この項において同じ。)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
引用元:昭和三十五年法律第百五号 道路交通法
罰則・反則金
点数 酒気帯び
0.25未満酒気帯び
0.25以上反則金 座席ベルト装着義務違反 1 14 25 なし ※後部座席装着義務違反は高速道路のみ違反点数の対象
引用元:警視庁
罰則は点数のみで罰金なしですが、無事故無違反で頑張っているのにたった1点で無事故無違反が崩れ去ってしまうのはもったいないことですね。
上の三つの項目を簡潔に言うとこうです。
- 運転者は座席ベルトを装着せずに自動車を運転してはならない
- 運転者は座席ベルト未装着の者を運転席以外の席に乗車させて運転してはならない
- 運転者はチャイルドシートを使用しない幼児を乗車させて運転してはならない
そして各項目に装着免除についての但し書きがあります。(詳細は後に出てくる道路交通法施行令参照)
タクシーに乗られるお客様の中には「後ろはしなくていいんだよね??」などとおっしゃるかたがいらっしゃいますが、道交法の定義では後部座席は除くなどの言葉はどこにも見当たらない上、2項での表現が“運転者席以外の乗車装置”とありますので全席にシートベルトの着用義務があることがここに書かれています。
後部座席はしなくて良いと思われている原因はあくまでも予測ですが、2008年までは全席対象ではなかったことが影響しているのではないかと思われる部分と、後部座席未装着で点数を加算とみなされるのが一般道では口頭注意にとどまる(違反点数を加算されるのは高速道路の未装着のみ)という条件がごちゃ混ぜになって認知されているのではないかと思われます。
そして全ての項目において“運転者は”という文章で始まっているように、全ては運転者の責任になります。
条件次第では着用は免除される
道路交通法第七十一条の三であった但し書きに対する免除の条件が詳しく書かれている道路交通法施行令(昭和三十五年政令第二百七十号)というものがあり、第二十六条の三の二の(座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除)というのがありますが、文章が長すぎるのでここは引用を省略し、以下にその内容を簡素化してみます。
道路交通法施行令の第七十一条の三に対する但し書き
項目1 運転者に関する免除
- 負傷、障害、妊娠中の方が装着することで健康に何らかの影響があるとき
- 座高の高い低い、肥満度などの身体の状態によって座席ベルトを装着できないとき
- 自動車を後退させるとき
- 消防車両を運転するとき
- 警察官が危険行為に対する警戒又は逮捕、犯人逃走を防止するために運転するとき
- 郵便集配車が集配エリアで頻繁に乗降しなければならないとき
- パレード等で前方後方を警察車両に護衛または誘導されている時
- 選挙カー運転時
項目2 運転席以外の座席の者に関する免除
- 子供を乗せたときにベルトが足りなくなった場合
- 負傷、障害、妊娠中の方が装着することで健康に何らかの影響があるとき
- 座高の高い低い、肥満度などの身体の状態によって座席ベルトを装着できないとき
- 消防車両又は緊急用自動車に同乗するとき
- 警察官が危険行為に対する警戒又は逮捕、犯人逃走を防止するために同乗するとき
- 郵便集配車が集配エリアで頻繁に乗降しなければならないとき
- パレード等で前方後方を警察車両に護衛または誘導されている車に同乗するとき
- 選挙カー同乗時
項目3 チャイルドシートに関しての免除
- 自動車の構造上チャイルドシートを固定することができない場合
- 子供の数が多くてすべての子供にチャイルドシートを装着できない場合でも子供を乗せる時
- 負傷、障害の為に装着することで健康に何らかの影響があるとき
- 肥満度などの身体の状態によってチャイルドシートを装着できないとき
- チャイルドシート装着すると不可能になる授乳などの日常の世話を行うとき
- タクシー運転者が旅客となる幼児を乗せる時
- 自家用有償旅客運送の運転者が幼児を乗せる時
- 応急救護のため病院やその他官公署へ緊急搬送するとき
ちなみに自家用有償旅客運送というのは過疎地域などでバスやタクシーの代わりに運送を行う車の事です。
タクシーにお子さんが乗ってくる際にチャイルドシートをいちいち装着しなくていい理由がこの3項の6に由来しているんだという事が分かりますね。
チャイルドシートピックアップ
けこちなら大事な子供の為に安心の日本製を選びます。当然以下の二つは日本製。
0か月から48か月まで使えるチャイルドシート(2023/04価格ドットコム満足度ランキング一位)
年齢 | 0か月から48か月まで |
身長 | 100センチまで |
体重 | 18kgまで |
12か月から132か月まで使えるチャイルドシート(価格ドットコム満足度一位)
年齢 | 12か月から132か月まで |
身長 | 70cmから145センチまで |
体重 | 9キロから36kgまで |
ジャパンタクシーの自動ブレーキによるシートベルト未着用の車内事故
ジャパンタクシーは乗るときの床が従来のセダン型よりも低くて体が不自由な方も乗りやすくお客様に評判がいいのですが、後部座席のシートはフラットでクッション性がなく滑りやすいです。
シートベルトの効果はニュースでよく見る大きな事故に対してばかりではありません。中でも急ブレーキは皆さんの日常の中でも起きやすい事象のはずです。
ジャパンタクシーが従来のセダン型にはなかった優れた機能、それは自動ブレーキです。これはセンサーが働いているときに前方にある障害物を察知し運転手の意思とは全く関係なく自動的にブレーキがかかって事故を防いでくれる素晴らしい機能です。しかし少しスピードが出ているとこのブレーキが強烈に効く場合があります。
そんな時、シートベルト未着用だと何が起こるでしょうか。
1.タブレットと手すりに激突
ジャパンタクシーは運転席と助手席の後ろに体の不自由な方の為に太目で硬い手すりがついています。更に、今のご時世では大抵のタクシーの左後部座席には電子決済するためのタブレットがついています。
手すりとタブレットはとても固いものですのでお客様は顔面や頭部を強く打ち大けがです。
後部真ん中に座っている方はフロントパネルについているシフトレバーの辺りに突っ込む可能性もあります。
2.後部座席の人や物が、運転席の上から突っ込んでくる
上記の動画ではドライバーが、“シートベルトをしていない後部座席の人物”によってつぶされているのが分かります。この勢いで突っ込まれ、頭部を損傷したとしたら人生を左右されることにもなりかねないでしょう。
ジャパンタクシーはトランクが車内空間にあるので状況によっては荷物が前方に飛んでくる可能性もあります。硬い素材で出来ているトランクケースや何らかの硬い素材の荷物を運んでいる際など、いつも以上に安全運転を心掛けなければいけません。
3.車外に飛び出す
こちらの動画では後部座席の方のほうが車外放出の可能性が高いという事を説明しています。
特に、後部座席真ん中に座る人も、スピードと状況によってはフロントガラスを突き破って車外放出する可能性もあります。
自分や自分のご家族が車外放出されてしまった時のことを想像してみてください。
身体的な理由によりシートベルトを物理的にできない方たちがいます
シートベルトが手術跡に触れ、不快なので出来ない方がいます。斜めがけにするあの形状が定期的に心臓の電池を入れ替える必要のあるペースメーカー利用者の方の傷に触れるのだそうです。形を変えてほしいという要望をおっしゃっていました。
これを見ていらっしゃる自動車業界のどなたか、考えてあげて下さい。
まとめ
タクシーで車内事故でお客様にけがをさせないように安全な運転をすることがまずは一番大切ですが、シートベルト着用の声掛けをして運転者の義務を最低限でも果たすようにすれば、万が一事故が起きた場合の免責の割合にも影響が出てきます。
ドライバーはもちろんの事、タクシーにご乗車いただくお客様全てにこの危険性が伝わって身を守って頂けたら嬉しいです。