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ペットをタクシーに乗せたい

タクシーアイキャッチ

タクシーにペットを連れて乗ってこられる方がたまにいます。
タクシーに乗せるペットに関する法律はどうなっているのか皆さん意識したことありますか?

タクシードライバー、お客様の双方に少しずつ気を付けることがありますので法律とともに一緒に見ていきましょう。

目次

関連する法律は主に旅客自動車運送事業運輸規則と身体障害者補助犬法

まずは運輸規則を読み解いてみましょう。

旅客自動車運送事業運輸規則(昭和三十一年運輸省令第四十四号)
施行日: 令和三年二月一日(令和二年国土交通省令第八十七号による改正)

(物品の持込制限)
第五十二条 旅客自動車運送事業者の事業用自動車を利用する旅客は、次に掲げる物品を自動車内に持ち込んではならない。ただし、品名、数量、荷造方法等について、国土交通大臣が告示で定める条件に適合する場合は、この限りでない。

(中略)

十四 動物(身体障害者補助犬(身体障害者補助犬法(平成十四年法律第四十九号)の身体障害者補助犬をいう。)及びこれと同等の能力を有すると認められる犬並びに愛玩がん用の小動物を除く。)

引用元:旅客自動車運送事業運輸規則

整理すると、

“事業用自動車に持ち込んではいけない物品リスト”、の(ここでは中略しています)の14番目にあるのが動物です。ただし、身体障碍者補助犬や補助犬と同等の能力を有するペットは除く、という意味ですのでペットは普通に乗せていいのです。

特に注意。盲導犬などの補助犬について

特に注意が必要なのはペットとは違う概念で認識しなければいけない補助犬であり、個別に身体障碍者補助犬法というものが存在します。車両に著しい損害を与える場合やその他やむを得ない理由がない限り盲導犬などの補助犬の乗車を拒んではいけないということが定義されています。

身体障害者補助犬法(平成十四年法律第四十九号)
施行日:令和三年四月一日(令和二年法律第二十八号による改正)

(公共交通機関における身体障害者補助犬の同伴)
第八条 公共交通事業者等(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二条第五号に規定する公共交通事業者等をいう。以下同じ。)は、その管理する旅客施設(同条第六号に規定する旅客施設をいう。以下同じ。)及び旅客の運送を行うためその事業の用に供する車両等(車両、自動車、船舶及び航空機をいう。以下同じ。)を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない。ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該旅客施設若しくは当該車両等に著しい損害が発生し、又はこれらを利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。

引用元:身体障害者補助犬法

基本的に補助犬はお乗せしないといけないという事です。盲導犬などの補助犬はしっかりとしつけをされており、まず汚染・迷惑行為とは無縁の存在ですので安心してお乗せしましょう。

2016年の古いニュースのためか既にソース元がweb上からなくなってしまいましたが、盲導犬を連れた視覚障害者の男性がタクシーに乗ろうとした際、運転手が「シートが汚れる」と盲導犬を乗車拒否したとして、金沢市のタクシー会社が北陸信越運輸局石川運輸支局によって道路運送法に基づき行政処分を受けたニュースは当時私の会社でもかなり話題になり、ペットとは異なる性質である補助犬の認識に対して注意喚起されました。私の会社の場合は補助犬の場合は決して断ってはいけないという指導でした。

この例を取り上げると、車内が汚れるというだけの理由では“その他やむを得ない理由”には当たらないと言えるでしょう。

車内汚染と、運転に支障が出る動物の危険な挙動について

補助犬による汚染や暴れはまずない事ですが、一般的なペットのケースでは当てはまるケースも出てくるでしょう。“著しい損害を与える場合”というのは例えば動物の暴れ方が激しくて運転に支障を与える場合や、嘔吐や排せつ物などの汚物、抜け毛や匂いによる車両の汚染などを想像できます。暴れすぎて安全が確保できない状態であれば確かに運行不可能になるケースもあるかもしれません。動物の具合が悪くてゲージには入れられず、横にさせてあげたい場合などは飼い主さんが大きめの毛布などを敷き詰めて乗れば車が汚れることを防ぐことができるでしょう。いずれにしても拒否・強制などせず“どうすれば双方に良い問題解決できるのか”を、お互いに歩み寄って考える姿勢が必要ではないでしょうか

ちなみに、標準の運送約款ではペットとしての明言はありませんが旅客の服装が不潔で汚染の恐れがある場合は拒否できると明言されています。

一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款
一部改正 国土交通省告示第175号平成26年2月28日(4月1日施行)

(運送の引受け及び継続の拒絶)

(中略)

第4条
(9)旅客が車内を汚染するおそれがある不潔な服装をしているとき。

引用元:一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款

ゲージ、キャリーケースに入れないと乗せられないのか

法令で決められている補助犬以外のペットについては、ゲージ或いはキャリーケースに入れないと乗せられないとはどの法律にも定義されていません。ただ、タクシー会社によって法令で決められている補助犬以外のペットについてはゲージ或いはキャリーケースに入れてから乗車してほしいなどの依頼はあるようです。車内を汚染される可能性、あるいは運転に支障をもたらす可能性ををゲージ或いはキャリーケースに入れることによって防いでもらうという意図です。これはお客様自身がご乗車される前に各タクシー会社のホームページや直接電話をするなどして確認する必要があるでしょう。

タクシードライバーの方も自分の会社がどのようにアナウンスしているかをホームページで確認しておくといいでしょう。

 タクシーに乗ってこられる方はこんな感じのを持ってます。上から入れられるのでペットも安心できるみたいです。


 飛行機に乗せたい場合に適しているタイプ

車内汚染に関して気になったネット上での誤解を招く情報

この話を色々調べている中で、「万が一、排泄や嘔吐などで車内を汚してしまった場合でも、処理や清掃の費用は運賃に含まれているので安心して」のように書かれているサイトがありました。事実からするとそう思えるようなことはあるかもしれないですが、認識の仕方としては誤りです。

タクシーの運賃は各事業者が国土交通省に申請をして認可を受け、メーター検査を受けているJIS規格のメーターを利用し、厳正に決められているものです。主に手を挙げて乗られる場合などのいわゆる普通のご乗車の場合は以下の内容で運賃が決まります。他にも迎車料金や割増料金などについていくつか定義されていますが、その中には“清掃代を含む”のような文言はありません。

距離制運賃(時間距離併用制運賃)
・乗車地点から降車地点までの走行距離に応じて、メーターにより運賃を算出します(初乗り運賃+加算運賃)。
・時間距離併用制運賃は、時速10km以下になった場合や、お客様の都合によりタクシーを待機させる場合に、その時間に応じて加算します。

引用元:全国ハイヤータクシー連合会

汚しても何も言われないと運賃にそのようなサービス料金が入っているようにお感じでしょうが、お客様として乗られた方になんとしても賠償しろと言っていないだけで、なおかつ会社が何とかしているわけでもなく、単純にタクシードライバーが労働時間と労力を削って泣く泣く掃除しているだけです。

ちなみに、運送約款にこんな文章があります。

一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款
一部改正 国土交通省告示第175号平成26年2月28日(4月1日施行)

第10条 当社は、旅客の故意若しくは過失により又は旅客が法令若しくはこの運送約款
の規定を守らないことにより当社が損害を受けたときは、その旅客に対し、その損害
の賠償を求めます。

引用元:一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款

運送約款というのは会社とお客様の間でのお約束事なので、ドライバーが運送約款を盾にしてお客様に対してお金を請求するなどの行為を勝手に判断することはできません。しかし、会社は損害賠償を求めることができるという事が実は運送約款で書かれています。

タクシーで酔客が嘔吐したり汚物を排せつしたりという事は比較的あります。大体においてわざと汚す人はいないですから、よほど悪意のあるケースでない限り会社自体が賠償請求をやろうとしない(私の印象ではドライバーが後始末をして当たり前だという慣習に見える)、タクシードライバーは会社を通せばこの手続きができることを知らない、あるいはそんな手続きするなら営業時間がもったいないし会社通すと面倒なので自分で洗ったりしてドライバー自身が時間と労力を削って損害を被っているということなだけです。こういうことがドライバーの冷たい言葉による乗車拒否につながっているのが正直なところでしょう。私たちタクシードライバーは大切な商売道具である車を一旦汚されるとその時点でお客様をお乗せ出来ない状態になり、その後の営業に支障が出るのは事実です。

ペットの話に戻りますが、ドライバーによる気分の悪い乗車拒否を無くすためにもお客様一人一人が一般的なマナーとして、車内が汚れないような、ペットが暴れないような工夫をしてご乗車されることをお願いしたいところです。
(私の経験から言うと、ありがたいことにたいていの方はマナーを守ってご乗車されています)

アレルギーの問題と課題

身体障害者補助犬法の最後にある“その他のやむを得ない理由”というのがもやっと来る表現ですね。これはその時の状況で判断するしかないのですが、補助犬をお乗せ出来ないやむを得ない理由があると思った時にはドライバー単独で判断せず、会社に電話をして正当なオフィシャルな話にして丁寧に対処するのがいいと思います。ただし、これはよほどの事情でないとやむを得ない理由にはならなそうだと思っておいたほうがいいでしょう。

例えばドライバーがやむを得ないと判断できそうな場合というものの中に“ドライバーのアレルギー”はどうでしょう。これは法律や運送約款による明言はされていません。
アレルギー症状の中には命にかかわるものもあります。動物による命にかかわるようなアレルギーがドライバーにある場合もあるでしょう。もしアレルギーを原因にした乗車の拒絶ができないとしたら、タクシー会社が入社時にドライバーになろうとする本人に確認するなどしっかりと対応しておくのが会社としての責務だと思います。
私の会社では、「補助犬やペットは必ずお乗せしなければならないので、アレルギーのある方はタクシードライバーはできません」と言い切っていました。

もう一つ、アレルギーの話はドライバーだけの問題ではありません。次に乗られるお客様がアレルギーを持っているとしたら、車内に残されている動物の毛や何らかのアレルゲンになりうるエキスが原因で命にかかわる事象に繋がる事も可能性は否定できないでしょう。お客様の安全・安心を思いやり、幅広い目線を持ち、業界全体で考えるべき大きな課題だと私は思います。

障害者の方の権利を守りながらも、命にかかわるアレルギーをお持ちの方の事にも思いを寄せて何らかの対応を考えることは必要なのではないかと思います。そうしないと障害者の方が逆に攻撃的な目線で見られることにも繋がってしまうでしょう。実際にネット上ではそのような目線の発言を見ました。これはあまりよくない、悲しい流れだと思います。

まとめ

今まで何度も動物たちとご一緒したことがありますが、私の場合は幸いなことにどの飼い主の皆さんもタクシーに迷惑をかけないように工夫をなさってくれている方たちばかりでした。ドライバーとしても困っている方の助けになりたいと思って仕事をしているので、微力ながらも力になりたいと思っているのです。どちらかの側が自分に都合のいい解釈をするのではなく、どちらにも不利益のないような仕組みを考える事が業界として必要な正しい姿勢だと思います。

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