※これは「Tapestry(- 邦題 – つづれおり)」ばかりに注目が行きがちな世の中にやんわりとジャブを贈る記事です。
85年当時中学生だったけこちにとって衝撃的だった曲、それはキャロル・キングの「It’s Too Late」という曲です。
この曲は71年に発売されてめちゃめちゃヒットした「Tapestry」(邦題は”つづれおり”)というアルバムに入っていますが、当時叔母にいくつか借りたシングルレコードの中に入っていた一枚でした。B面は「Will You Love Me Tomorrow」だったかな?そのあと自分でアルバムを購入しました。個人的な事ですが、当時世の中にCDが出たばかりで店頭在庫がなかった函館ボーニモリヤの山野楽器でわざわざ取り寄せたという、けこちが人生で初めて買った記念すべきCDのアルバムなのです。
今でも何かというとラジオでかかったり誰かがカバーするのは「It’s Too Late」をはじめ「I Feel the Earth Move」「You’ve Got a Friend」「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」などのつづれおりの中からの代表曲ばかり。更に言うと本人もつづれおりの曲をやはりライブとかでやりがちのようですがまぁ…かなり強力な売れ方をしたすごいアルバムだからかけたくなるだろうし、歌いたくなるのはわかるけど、もっと素敵な曲があるのにな。
今回はつづれおりについては完全消化したけこちが繰り返し聞きたくなる70年代のCarole Kingの中でも「つづれおり以外でより70年代らしさを感じられるアルバム」だけを厳選してピックアップします。注目のポイントとして、キャロル・キングは最終的に4回結婚するのだけれど、その男性達との関係性やその時々の想いや何かしらの雰囲気や心模様が曲に現れていることが更にテクニックだけではなく何かこう、曲の魅力に繋がる不思議な力を纏っているようにも聴こえるので、そういう視点でも注目していきます。
ブリル・ビルディングで作曲活動をしていたジェリー・ゴフィン&キャロル・キング夫妻
キャロル・キングは三歳の頃から音楽に対して好奇心旺盛、ゆえに母親はピアノを弾かせたそう。高校生の頃すでに音楽活動をしていたと。なんか言葉と数字に並外れた資質を持っていたそうで飛び級したり、音楽だけではなくともなんだか普通の子じゃなかったようです。
1950年代後半から1960年代末まではブリル・ビルディング(wikipedia)でジェリー・ゴフィンと共に夫婦で作曲活動をしていたので、作曲に関してはこの経験がかなり訓練になったんでしょうね。
この頃にゴフィンと作った曲に関しては、後にセルフカバーしたアルバムを出しています。
ちなみに、ブリル・ビルディングサウンドという事で言うと代表的な曲を集めたプレイリストもアップルミュージックにあります。どこかで必ず聞いたことのある曲ばかり。
Now That Everything Has Been Said(1968) -The City-
このアルバムはキャロルが参加したThe Cityというバンドの68年のアルバムで邦題は「夢語り」。ジェリー・ゴフィンと離婚した後(もしかしたら離婚と次期夫になるチャールズ・ラーキーとのバンド活動や関係性は若干かぶっているのかも)のアルバム。この三年後にビッグヒットとなる「つづれおり」がリリースされますが、もうこのあたりからクオリティーが高い楽曲ばかり。70年代ではないけれども外せないアルバム。
Writer (1970)
一曲目はなんだかこの時代独特のギターが目立つ印象ですが、この曲以外はだいたいにおいてその後ビッグアルバム「つづれおり」に見られるキャロル・キングらしい音そのもの。穏やかで品質の高い曲ばかり。6と8の二曲を除いてジェリー・ゴフィンとキャロル・キングの作詞作曲。離婚しても共同作業者として活動できるなんてすばらしい。
Music (1971)
「つづれおり」の直後に発売されたアルバム。「Music」の歌詞を聴くとまるでキャロル・キング自身の天才さを歌詞にしているよう。「Some Kind of Wonderful」は元々61年にThe Driftersがリリースした曲だけど、このアルバムではしっとりと歌われている。
1971年発売なのにこの洗練されたクオリティーを当時みんながどう思いながら聴いていたのか気になる。
Rhymes and Reasons (1972)
このアルバムは穏やかな流れの曲が多く、どんな時もリラックスして聴ける。休日の午前中など穏やかな気持ちになりたい時にぴったりのアルバム。全曲素晴らしいけれど、個人的に心を揺さぶられる感じがするなと感じていたのは5と11。よくよく見たらこの二曲はゴフィンやラーキーとの共同作品。やはり…言葉にできないなにかをまとっている曲達だ。
Fantasy (1973)
このアルバムは今回のテーマである70年代のキャロル・キングらしさ、穏やかな極上ポップスという色合いとは少し異なったものであるのでピックアップしないつもりだったのですが、5曲目がキャロルらしく素敵なのと、アルバムジャケットが印象的なので取り上げました。
このアルバムの時期はなんだかSuperflyとか黒いジャガーとか、あの辺の映画音楽に影響されちゃったのかなという印象。(けこちの勝手な憶測)
Thoroughbred (1976)
一曲目の「So Many Ways」、これだけでもう心にグッとくるのはけこちだけでしょうか。真相はわからないけれど、これはこのアルバムで数年ぶりに再度コンビとして作詞作曲を行ったジェリー・ゴフィンへの想いにしか聞こえない。
ゲストが凄い。有名どころではデヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュ、ジェームス・テイラー、J.D.サウザー。気になるのはベースがもう旦那様であるチャールズ・ラーキー氏ではないという事。もうこの時には関係破綻していたのか。確かにこの次の年に3回目の結婚をするわけだけれども。
少女 五輪真弓
キャロル・キングがデモテープに感銘を受けて制作に携わったという五輪真弓さんの「少女」も聞いておかないといけません。サウンドは日本ではなくもう70年代当時のアメリカそのもの。
アルバムジャケットの撮影をしたジム・マクラリー(Jim McCrary)
写真をたしなむけこちにとってはA&M レコードのフォトグラファーであったジム・マクラリーについても気になる要素。「つづれおり」「Music」「Rhymes and Reasons」でアルバムジャケットを撮影しています。粒子を感じる、非常に味わい深い写真。
この方、たーーーーっくさんアルバムジャケットの撮影をされていますが、特にキャロル・キングをはじめとしてカーペンターズやジョー・コッカーのアルバム写真で有名みたいです。例えば、うちの親曰くけこちが2歳の頃気味悪いほどの発音の良さの英語で歌っていたというアルバム「Now & Then(1973)」
このアルバムは元写真を担当。(アートワークは日本のイラストレーター・画家の長岡秀星さんが担当だそうで、詳しくこの写真素材にどのように係わったのかはわからないけれど、この写真のトリミングセンスは幼心にも印象に残っており、凄いと思う)
あ、そういえばこのアルバムの「One Fine Day」はキャロル・キングの曲ですね。
ジョー・コッカーの「Mad Dogs & Englishmen」
一体どうやってこのポーズを思いつき、そしてさせたのか。
いずれにしても、若い頃音楽カメラマンになりたかったけこちにとってはうらやましい限り。
あとがき
Wrap Around Joy (1974) – 邦題 – 「喜びにつつまれて」はけこちチョイスには入れませんでした。理由は今回のテーマよりもおしゃれで洗練されすぎたサウンドだからです。あくまで70年代初頭の素朴なサウンドで選んでいますので。「Jazzman」が入っているので外したくなかったんですけどね。それにしても74年でこのサウンドって凄い。気になった方は聴いてみて下さいね。
1974年、日本で売り上げ一位だった曲は殿様キングス。なんと「キング」で繋がっていた。