障害者手帳とタクシーにおける障害者割引(障割)の使い方

私が働いている東京23区、武蔵野三鷹地区ではタクシー乗車時に障害者手帳を提示すると乗車料金が10パーセント安くなる制度があります。障害者割引、障割と呼ばれているものです。利用される方、乗務社員、お客様共に正しく理解されていないケースもあるようですので今一度確認してみましょう。

目次

障害者手帳とは

障害者手帳の概要についてですが、厚生労働省のホームページではこのように記載されています。

身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付する。

厚生労働省ホームページ身体障害者手帳の概要より

上記に引用した厚生労働省のホームページに表記されている内容によると東京都の場合は各区が担当しており、取得すれば様々なサービス、助成、割引が受けられます。

障害者に認定される方たちには様々なケースが存在します。

障害者と聞くと見た目ですぐわかるイメージがあるかもしれませんが、実は様々な理由によって障害者認定を受けられています。

厚生労働省による概要に記載の交付対象となる障害の種類は以下の通り。

交付対象者

身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害があるもの
別表に定める障害の種類(いずれも、一定以上で永続することが要件とされ
ている)

・ 視覚障害
・ 聴覚又は平衡機能の障害
・ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
・ 肢体不自由
・ 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
・ ぼうこう又は直腸の機能の障害
・ 小腸の機能の障害
・ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
・ 肝臓の機能の障害

厚生労働省ホームページ身体障害者手帳の概要より

上記にある通り、内臓の疾患によるケースもありますので見た目では決して判断できませんし、してはいけません

届け出、問い合わせ先、障害の等級や受けられるサービス、割引、控除などの詳しいことは厚生労働省ホームページ、自治体ホームページなどで確認してみてください。

タクシーでの障割の利用の仕方

障害者手帳を持っていらっしゃる方に対して沢山あるサービスのうちの一つがタクシーでの割引サービスです。
サービスの受け方は新しい情報に更新されていないなどの理由で各区のページで差があるようですが、2022年1月現在ではおおむね以下の条件となります。

乗車前に身体障害者手帳、療育手帳(愛の手帳)を提示すると1割引を受けられる。ただし、精神障害者保健福祉手帳については割引になる事業者とそうでない事業者がある。

2020年4月1日より、東京ハイヤータクシー協会に加盟するタクシー会社においてはミライロIDアプリの提示でも同様の割引が可能。

上記いずれかの提示がない場合は割引の対象にはならない。

タクシー乗務社員は、

・障害者手帳の提示
・ミライロアプリ画面の提示
・配車情報に「ミライロ配車」などの表示がある

上記の条件により、タクシーメーターにある障割のボタンを押すことが出来ます。

配車時の情報に「ミライロによる配車」などの文言がある場合は、手帳の表示を求めることなく障割ボタンを押すことが可能です。(手帳を見せることに苦痛を感じる方がいらっしゃる方の為に、ミライロがそのようなサービスをしている事を理解しましょう)もしかしたらここは各社で機器の扱い方などに違いがあるかもしれないのでドライバーの方は確認してください。

上記にある通り、提示がないと割引はできませんので「家にあるけど置いてきた」や、「いつも手元に無くても押してもらっている」や、「見たらわかるだろ、こんな見た目なんだから」などの理由によって障割ボタンを押すことはできません。

とにかく手帳またはミライロアプリ画面を提示すれば割引になりますので、ご乗車になる方はお出かけの際に必ず手帳をご持参ください。

ちなみになぜ提示するタイミングが“乗車前に”なのか。

実際には乗車されてから降車されるまでの間のどのタイミングでも障割対応は普通にしていますが、法人タクシーの事業者が障割を負担してくれている場合、障害者ではないお客様が降りた後に乗務社員が障割ボタンを押し、終業時にさも障割があったかのような届けを出すことにより、売り上げとは別の割引分を直接不正に手にする乗務社員がいる、こんなことが実際にあります。(メーター不正使用と横領にあたる行為で懲戒案件となる)

私の会社は障割分を乗務社員に代わって事業者として出してくれている事から、障害者割引の売上処理についてはお乗せした時間、場所、お客様の人数や性別のメモを一緒に終業時に報告します。万が一会社から疑わしいと思われると、車内カメラで録画されたその時間の様子を確認されます。そのような不正行為の障割ボタンを押すタイミングは「支払い合計ボタン」を押した後に行われるため、「乗車前」という言葉を表記している根拠の一つと思われます。

ミライロIDとは

障害者手帳の情報を取り込むことで行政窓口での確認がスマホひとつでできる、という便利なサービスのようです。
タクシー会社によってはミライロアプリとタクシーアプリが連携されていてわざわざ障害者手帳やミライロアプリの画面を見せなくてもいいケースもあるようなのでお客様・乗務社員ともに各会社のホームページで確認してみましょう

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福祉券だけでは割引されないので注意

ちなみに、福祉券というものがあります。(ご使用の際にはご自身の乗りたいエリアで使える福祉券かどうかを事前にご確認ください。)これは障害者手帳を持っていらっしゃる方がお住みの自治体への届け出によって交付されるものです。

障害者手帳の提示で手に入る券だという事が影響してか、福祉券を出しただけで割引されるものと勘違いをされているお客様や乗務社員がいるということがネットで見受けられました。東京23区武蔵野三鷹地区は福祉券だけでは割引を受けられません。日本全国の各自治体によって違いがあるようなので、各自治体ホームページや各地方のタクシー会社ホームページを予めご確認ください。

東京23区武蔵野三鷹地区では福祉券の利用時に障害者手帳を提示していただければ福祉券を利用しながら割引を受けることが出来ますのでタクシーご利用の際には是非両方ご持参いただき、有効にご利用ください。

障害者手帳によって交付される福祉券ですが、障害者手帳のご提示がない場合は乗務社員は障害者割引のボタンは押せませんのでご注意ください。福祉券の給付と障害者割引のための手帳の提示は別物です。

証明もないのに勝手に障害者割引ボタンを押すのはメーターの不正使用という違反行為

もし証明がないまま乗務社員が障害者割引ボタンを押すならばそれはメーター不正使用という違反行為となります。

私は過去に提示がないと割引はできないことをお伝えした際、「こんなに身体が不自由だっての見ればわかるだろ!」と言われたことがあります。

しかしそれでも、乗務社員はお客様の事を障害者手帳をお持ちの方だということを証明もないのに勝手に判断することはできません。逆に、乗務社員によって勝手に障害者だと決めつけられた事が名誉棄損で訴えられたケースもあるようですので、乗務社員が正しいルールに基づいた運用をする事が求められます。

実は実際に割引をしているのは国や自治体ではなく事業主、又は乗務社員

障害者の皆さんの割引分を負担しているのは実は国でも自治体でもなく、事業者です。
個人タクシーは事業主ですので直接売り上げからそのまま引かれるイメージです。
私の所属する法人タクシーでは割引分は会社が受け持ってくれていますので、割引によって収入が減ることはありません。

しかしネットで調べてみると乗務社員が売上金から負担するケースも会社によってはあるようで、乗務社員の方やこれからタクシー会社に就職する方は、雇用契約や会社による何らかの決まりがあるのかを会社に確認してみて下さい。

障害者の方をお乗せする場合、ジャパンタクシーでの車いすごとの乗車で時間と手間が掛かったり、わざとではないにしても大小問わず汚物で車両を汚されてしまったりするケースもあります。(車両を汚されるとそこで営業できなくなり営業所に戻るしかなくなるので売り上げにダイレクトに打撃、給料に響くというのが一般のタクシーの現実)

その上更に割引をしなければならないのが乗務社員に設定されているとしたら、乗務社員の心理としては車いすで手を挙げている方を見て見ぬふりをして素通りしたくもなるのでしょうね。実際私が車いすのお客様をお乗せしたときには、「みんな見て見ぬふりをして素通りしていくんですよ。30分待ちました。」とおっしゃっていました。悲しい現実です。

タクシー事業者は国の認可で行う公共交通機関ということもあり、公共の福祉という概念も絡んできます。目の前の売り上げばかり考えてしまう乗務社員にこの概念が理解できるかというと残念ながらなかなか難しい場合もあるのかもしれないでしょうから、(会社の教育の在り方や企業風土、乗務社員の性格などの要因で違ってくる)乗務社員の心理的要素も目をそらさずに現実として受け止めた上で事業者が教育や待遇の面で工夫や努力する必要があります。

会社が割引分を負担している場合に起こる障害者割引ボタンの悪用、懲戒に繋がるケースも

タクシーでの障割の利用の仕方で触れましたが、会社が障害者割引を受け持っている場合(乗務社員が払わずに会社が割引を引き受けてくれる会社の場合)は以下のような不正な行為をする乗務社員がまれに現れます。

障害者ではないお客様が降りた後に障害者割引ボタンを押し、割引分を会社に負担させ、割引分を自分の儲けにする

メーターの不正使用という違反行為のみならずメーターを利用した会社のお金の横領にあたりますので、発覚した際は乗務社員はなんらかの懲戒を受けます。(下手すると懲戒解雇ですが、現実には会社にいられなくなり自ら退社するということが多い)

障害者割引ボタンに関するメーターの不正使用は乗務社員が厳しい処分を受けます。障害者割引というのは事業者が割り引いている、特にたくさんの車を動かしている法人タクシーではより厳しくチェックされるということで、証明がないと障害者割引ボタンを押せないという仕組みがあるというわけです。

とにかく、障割ボタンを押す行為というものは会社から結構厳しく見られる部分なのです。(メーターに関する操作に絡むことは全てにおいて厳しい)なので、メーター操作というものはドライバーが気分や勝手な判断で押せるようなものではなく、厳密に処理する必要があるというのが原理原則だろうという事をご理解ください。

けこち
セコいことをして懲戒になるリスクを背負うよりも普通に働きましょ!

まとめ

乗務社員が障害者割引ボタンを押すということは、障害者の方の気持ちとか乗務社員の気持ちがという前に、厚生労働省に認められた障害者手帳を持っていらっしゃる方たちの障害者割引の利用ルールに基づくものです。乗務社員は勝手に判断をするわけにいかず、関連する法律やルールに基づいて動きますので、障害者の方も以下のページを参考にしていただき、ルールに基づいてお得なサービスを利用していきましょう。

東京タクシーセンターによる障害者割引の使い方案内
https://www.tokyo-tc.or.jp/faq/index.html

東京ハイヤータクシー協会による障害者割引の使い方案内
https://www.taxi-tokyo.or.jp/call/pricelist.html

ミライロID
https://mirairo-id.jp/

時間帯で入れないエリアにお住いの重度の障害をお持ちの方は、警察から許可証をもらう事で家の前まで来てもらえるかもしれません。以下のページに方法について取り上げていますのでぜひご覧ください。

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タクシーでは使えませんが、ご自身でお車を運転する場合の高速道路での障害者割引の利用の仕方については以下のページに書いていますので参考になさってください。

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